勅使河原蒼風が最初にいけばなを学ぶ際、出された課題が「花の挿し方」であり、このシンプルな課題に対して彼は想像を超える方法で回答しました。それはただ花瓶に花を挿すだけではなく、花瓶を水に浸けて花を挿し、水面と花との相互作用を表現したのです。これは、彼が花と環境、そしてそれらが共に作り出す空間全体から美を捉えるという独自の視点を示すエピソードと言えるでしょう。

また、「私が花を挿すことは、先ず心に花を咲かせることから始まる」との言葉を残しており、心の中に花を咲かせるという彼の哲学は、美術だけでなく人生そのものへの深い洞察を示しています。

これらのエピソードから、彼がどのように自然を見つめ、芸術を通じてどのように表現し続けたかが理解できます。そしてそれは、勅使河原蒼風がいけばなを単なる花のアレンジメントから、哲学的深達さを持つ芸術形式へと昇華させた大いなる証ともなっています。