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報告

沈黙の雨

佐野雅基さんが2023年4月9日に投稿
トモ 今は静かな時が 流れているかい
トモが夭折してから 雨が降り続け
空を茫然と見上げているよ
僕らの日常は脆く 崩れ易く
流れゆく時流にひたすらに耐え
何度も何度も 振り返り
トモの輪郭を街角に
酒場の喧嘩の 座りの悪い一席に
何とか繋ぎ止めようと もがいている
冷たい唇 冷たい頬
触れた指先は凍結し
厭世のはざまでトモを
焼舌に語り始める
虚しい弁舌に傷つき
再び 降りしきる沈黙の雨に
凍結した指先を 流していく
それが足早に去った
トモへの
僕のささやかな鎮魂歌

錯綜と忘却の混迷の中
薄れていくトモの
輪郭
強制される日常は
悲情に明けて行く
僕らは何度も繰り返し
トモの名を呟く
精霊達に抗い
僕らは なおもその先の
宿命を見据える
トモ 僕らは
狼狽えている
ただそれだけだ
何の術もなく
無防備に
ただ狼狽えている
今はまだ僕らには
何の術もなく
咆哮を噛みしめて
僅かな涙腺の隙間から
夜明けを迎えている
トモ 今はまだ
それが僕らの現実だ

ゆく先々で花売り娘の
恋行に 視線を外しながら
トモへの花束を編んでゆく
いつかそんな静かな時が
訪れてくれるのだろうか
いつかトモの輪郭が
舫いに深く流れ
僕を呼ぶトモの声が
聞こえなくなった時
そこから立ち上がる
かすかな息づかいに
トモの終息を重ね
今一度手を差しのべよう

卜モ
寒くはないか
僕らはトモのいない
初めての冬を迎えようとしている
トモの思い夢希望そして願い
僕らに課せられた トモの眼差し
ほんの少し ほんの一歩
虚無の間を埋めながら
傾く日差しに手を翳して
冬を魅えていくよ
いつか さり気なく
トモを 振り返り
再会をする日の為に

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