内容

大切な人を亡くた悲しみ(Grief、グリーフ)により、心が壊れることを経験される方は世の中に多くいらっしゃいます。また、あなたもその一人ではないでしょうか。 

1960年代、グリーフケアはアメリカで始まりました。最近では一般的になり、アメリカの病院で、患者が亡くなったとき遺族が、無料でグリーフケアを受けられたり、その際にデジタルツール(追悼サイト)なども併用するように発展しております。

グリーフケアは、その悲しみを「自分が受け止める」というプロセスをサポートするもので、決して他人や、供養行事(葬儀・お墓など)が、本質的な悲嘆を取り除いてくれるものではありません。厳しい言い方ですが、「自分がその悲しみと一生涯生きていく」ことが前提となります。そして、グリーフケアとは一人では乗り越えられない、そのプロセスをサポートしてくれるものです。

 

グリーフとグリーフケア

 

「グリーフ」とは、直訳で悲しみ、悲嘆、死別と訳されます。人間誰しも配偶者、両親、兄弟姉妹、子供、同僚、大切な仲間など生きる時間を共有してきた大切な人を失うと、深く、どうしようもない悲しみに襲われます。

この時期に、「悲観のプロセス」と呼ばれる様々な情緒的・身体的反応(ストレス反応)が生じます。この情緒的・身体的反応や様々な問題を軽減するために行われる遺族への援助、或いは何らかの助けになる行いを「グリーフケア」と言います。

 

グリーフの旅とは

 

死別によるグリーフを抱える方がたどる過程は、英語でよく「旅:Journey」と表現されます。このグリーフでのストレス反応は、「闘争・逃走反応」とも呼ばれ、精神面や身体面、日常の生活などに、様々な反応が生じます。

特に悲観のプロセスにおいて、死生学第一人者アルフォンス・デーケンによると下記の12の過程が生じるとされています。 これらは、身近な方を亡くした方の全てのプロセスが出現するわけではなく、順序が入れ替わったり、あるいは複数の段階が重複することもあります。例えば、「記念日反応」という誕生日や命日、故人との特別な思い出の日に、感情の起伏が激しくなることなどもあります。

 

悲観感情の12のプロセス

心身の状態 具体的症状・説明
①精神的打撃と麻痺状態 思考の低下などの生体防御的ストレス反応、心が麻痺している状態
②否認  死という事実を認めない。きっと何かの間違いという否認
③パニック 悲観の初期症状、極端なパニック状態
④怒りと不当感  「なぜ私だけがこんな目に」という怒りと不当の感情、混乱、絶望感
⑤敵意と恨み  故人の傍にいた医療従事者、身近な介護者へ向けられる敵意、恨み
⑥罪意識   「こんなことになるなら、生きているうちにもっとこうしておけばよかった」という罪意識
⑦空想形成、幻想  空想の中で故人がまだ生きていかのように思う
⑧孤独感と抑鬱  葬儀後少し落ち着いてくると非常に強烈な孤独感に苛まれる
⑨精神的混乱と無関心 生活目標の喪失、あらゆることへの無関心
⑩あきらめ-受容 少しずつ現実に向き合うようになる
⑪新しい希望 悲観の苦しみからの希望の光 -笑いやユーモア
⑫立ち直りの段階 新しいアイデンティティーの獲得へ

 

グリーフ・カウンセリング

 

自分一人ではどうすることもできない「グリーフ:悲しみ」を感じる時は、時間が解決してくれると考えるより専門家と話すとよいでしょう。欧米では、グリーフケアをスタートする前に「グリーフカウンセリング」のセッションを第三者の専門家と行います。これは、 1対1の設定や、少人数のグループなどがあります。

また、近年ではオンラインで受けることもできます。カウンセリングは、専門家の指導を受けながら「グリーフの旅」を進めることができる、サポートを見つける機会です。あなたがこのカウセリングが必要かどうかは「グリーフケアのカウンセリングを検討する5つの理由」(英訳)を参照してください。

 

夫や妻、友人や親戚などのサポート

 

グリーフケアににおいて通夜、葬儀、法要などの一連の儀式の流れは、故人と向き合う機会が与えられます。故人の思い出話、遺品整理、仏壇に話しかけたり、墓参り、法要などもその一助となります。ただし、日常生活において何かの折に悲しみの感情が湧き起ることは多々あります。

グリーフケアには、悲しみを自分の心だけに留めず、何らかの方法で表に出すことや、同じ悲しみを分かち合い、受け止めてくれる夫や妻、友人や親戚などの人々の支えが必要です。もしこれらの人に、グリーフケアの理解が乏しい場合は、一緒に専門家とのカウンセリングに参加してもらいましょう。

ただし、夫や妻、友人や親戚などへの過剰な期待は禁物です。身内といえども一人ひとりのグリーフの旅は千差万別です。グリーフの旅路で大切なことは、非常に辛くて困難な時期の、家族や信頼のおける親しい間柄の方々、地域社会のサポートですが、あくまでも「自分」が悲しみを受け止め旅をしてゆくのです。つまり、外部のサポートで悲しみは消え去るものではないのです。

 

グリーフケアのデジタル化

 

近年のデジタル化の普及によりグリーフの旅をサポートするデジタルツールは多く存在します。Zoomを使ったオンラインカウンセリングやYouTubeのビデオを活用したサポート、本をオーディオブック化して聞けるものなどありますが、ここでは欧米で数多くの会社がサービスを提供しているオンラインメモリアルサイト(on-line memorial site)のうち、世界で280万人が使う追悼サイトについて紹介します

追悼サイトとは、亡くなった人を追悼するウェブ上の空間です。近年では、無料で故人のウェブサイトをだれでも簡単に作成できることから”仮想空間上の思い出”とも考えられグリーフケアでも活用されています。

 

グリーフケアでの3つの活用ポイント

 

自分の気持ちに立ち向かう:

素直に自分の悲しみや気持ちを表現する場合、自分の妻子でも躊躇する場合があります。それが故人のウェブサイトというデジタルの場であれば、自由に表現して気持ちに立ち向かうことができます。例えば、愛する故人への心温まるメッセージ、思い出深いアルバム写真や、逸話などを、通してその時の気持ちを簡単に自由に表現できます。

外部のサポート:

必要に応じて、夫や妻、友人や親戚など故人のウェブサイトをシェアすることができます。もちろん自分だけの未公開版から、徐々に自分の悲しみを共有する人を追加してゆくこともできます。これにより、自分の直接言えないグリーフの旅を表現できます。信頼のおける方々と一緒に投稿されることで、故人に対する様々な想いや輝かしい人生の思い出が共有されます。故人へのウェブサイトをご遺族で構築していく作業が、悲しみからの心の開放や癒しを与える機会を創出できることがあります。

未来のゴールに集中する

あなたが愛する人を失ったとき、最も難しいことの一つは、新しい人生に向かって前進することです。あなたが変えることのできない過去に悩まされるのではなく、あなたが目の前にあることに集中するのを助ける目標を設定し故人に報告しましょう。故人のウェブサイトでの報告は、永遠に保管されあなたと故人の歴史を新たに作り後世に伝えることができます。

 

まとめ

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通常、傷ついた心は時間をかけて徐々に回復していきますが、あまりに悲しみが深いと立ち直れなかったり、立ち直るまでにかなりの時間がかかったりする場合もあります。特に家族や地域社会など人とのかかわりが少なくなっている現代では、悲しみを1人で抱え込んでしまう人も増えています。そんな背景から、日本でも各地の医療機関や市民グループなどがグリーフケアに積極的に取り組んでいます。

グリーフケアの基本は、「悲しにに向き合うこと」、「未来の目標を明確にすること」、「必要に応じ専門カウンセリングを使うこと」です。

また、遺族は「自由な感情表現をすること」、友人は「遺族に共感して自身の価値観を押し付けないこと」です。少子高齢化、お一人様暮らし、核家族化、コロナ禍で、大切な方を亡くした方が集い慰めあうことが難しくなり、寄り添う人の存在が希薄化しやすい時代です。従来の対面式とオンライン上のグリーグケア手法も使いながら、身近な人を失う悲しみから、自分なりのグリーフの旅を始めましょう。

グリーフの最もつらいことは、人生の自分を形成する一部になるということです – あなたは個人的な悲しみの経験をした人であり、あなたの悲しみの旅は、あなたにとってもプライベートなものなのです